西武そごうの広告を見た。
改めてクリエイティブの難しさを感じて、
どのようにしたら正解だったのだろう。
元広告屋であり、男女中間の立場に立つ
Xジェンダー寄りの視点で改めて考えてみた。
この広告で言わんとしている事は分かるよ。
正直、はじめて見た感想は
「攻めちゃったねぇ〜、西武。」という感想。
と同時に、ふわふわしている印象を受けた。
今回は、そんな西武そごうの広告について
- この広告がなぜ意味分からなく見えるのか?
- パイ投げ女性をビジュアルにする意味
- この広告は何を伝えたかったのか?
- どのようなクリエイティブだと正解なのか
それぞれ炎上した理由なんかも合わせて
解説していきたいと思う。
目次(この記事で分かること)
西武そごうの広告
画像出典:西武「わたしは、私。」新聞広告より
これが、例の広告である。
この広告が炎上する理由を探ってみる。
西武そごうの広告はなぜフワッとしてしまうのか
この広告はよく見ると
誤解を招きやすい設計になっている。
女性の現状と本音と希望がごちゃごちゃに
混ぜられて同じ延長線上で語られているのだ。
▼次の画像を見て欲しい。
画像出典:西武「わたしは、私。」新聞広告より
この②「心の叫び」の部分。
これが、とても誤解を招きやすい。
なぜなら、散々「生きづらい女性の視点」
を語っているのに、この心叫びの部分では、
「時代の中心に、男も女もない」と書いている。
「生きづらい女性視点」に共感を抱いて
読み進めていた女性からすると、びっくりである。
「バリバリ男尊女卑の差別社会なんですけど?」
「ありえない。最悪だ。何も分かっていない」
そういう心境を女性に抱かせるのである。
②「心の叫び」の部分で
「わたしは、私に生まれたことを讃えたい」
と書いている事から分かる通り、
この②の枠は女性の本音部分。
生きづらい女性の「心の叫び」なのは間違いないでしょう。
画像出典:西武「わたしは、私。」新聞広告より
ただ、急に①の女性が抱いている生きづらさを
打ち消すような流れなので、
「女性の心の叫び」だと分かりづらい点が
誤解を招いている要因だと思う。
女性が以下の様に語っていれば、
違和感はないだろう。
生まれた事を誇りに思う」
本来はこうだろ。という「本質」と、
現状は全然違うという「現状」。
その2つがごちゃ混ぜなので
分かりづらくなっている。
そして、
③の「来るべきなのは、一人ひとりがつくる「私の時代だ」の部分。
画像出典:西武「わたしは、私。」新聞広告より
うん、分かる。
女性が「自分らしく生きる事」それには、
女性だけでは無く、男女関係なく、
一人ひとりが「女性だから」とか、
「男性だから」とか、偏った視点ではなく、
その人そのものを見ることが必要。
一人ひとりが曇りの無い目で「自分らしく」
生きられる状態なら、
他者を色眼鏡でジャッジすることも無いもんね。また、
男性だから人前で泣いちゃいけない。
変えていかないといけない所ではある。
女性が「世の中こうなればいいな」
と思う考えから発した言葉が
「来るべきなのは、一人ひとりがつくる「私の時代だ」
という感じであれば、少しは納得はできる。
けどさ、
これ誰に対してのメッセージ?
このコピーの流れだと、
「女性だけが一人ひとり変われよ」
っと言っている様に聞こえる人が多いと思う。
だって、広告は基本的に流し読む人が多いから。
1つの広告にじっくりウーンと考えて
意味を見出す人は少ないから。
世の中のみんなは大体疲れているから。
日々仕事のストレスがあって、
そもそも読み解く余力が残ってないから。
ちゃんと読み解けば意味的には
ちょっとだけポジティブかもしれないよ?
だけど、これは確実に誤解を招く。
この魅せ方のバランスが広告って難しいなと思うのでした。
ちなみに④の
「そうやって想像するだけで、ワクワクしませんか?」
というのは、ホントに雰囲気だけで。
そんな世界がほんとうに来たら、
みんなお互いを尊重して、
男とか女とか関係なく、「人」として
キチンと評価されて、面倒な事もなくなるよね。
そんな世界が来たらワクワクするよね。
ってのは、分かる。メッセージとしては分かる。
けど、やっぱり、流し読む感じだと、
パッと見、「想像するだけ」という文言も合わせて
現状が何も進展していない感じが先走って伝わる。
また、そもそもなんだけど、
①の生きづらい女性視点では、
着地点で男の時代でも女の時代でもない
「私の時代」を投げかけている。
そこに着地してる。
そういう無意識下で与える印象のズレが
多く見受けられる内容だと思う。
④の取ってつけたような、言葉も気になる。
これまで登場して来なかった、
明らかに第三者の視点で発せられた
「ワクワクしませんか?」
という内容も、誤解を招く原因となっている。
だって、未来に希望を感じる世界像を
提案している訳では無いもの。
西武そごうの広告、パイ投げつけられた女性の意味
では、なぜ西武そごうの広告は
パイを投げつけられている女性のビジュアルなのか?
これは、明確である。①の部分で述べた、
女性だからと強要され、女性だからと無視されて、
女性だからと減点されて不当な扱いをされてきた
女性自身の心象風景がポスターになっているのである。
そして、広告は基本的にそのターゲットとなる人に
刺さる内容でないといけない。
「パイを投げるなら、男性に対してだろ!!」
という意見があったが、それは違う。
この広告が女性に対しての応援メッセージである場合、
男性がパイを投げられているビジュアルであれば、
この広告を見て、真っ先に男性が振り向くだろう。
男性が振り向いては意味がないのだ。ターゲットではない。
そして、そもそも男性に対して、
攻撃的なビジュアルであれば、男性が女性に対して
不当に攻撃してきたように、お互いが攻撃し合うだけで、
物事は何も進まない。この広告が目指している
メッセージとはズレる。
そこが、広告って難しいな。
伝えるって難しいなと心底痛感する。
また、ほんとうに女性に対しての
応援メッセージであれば、
先ほど書いた
「来るべきなのは、一人ひとりがつくる「私の時代だ」
というメッセージも、男女へ向けたメッセージであるべき。
ただ、この広告の場合は女性限定になってしまっており、
これでは「被害者女性にさらなる努力を強いる」
という誤解を与える構図になっている。
女性はもう頑張らなくていいのだ。
今までが頑張り過ぎたのだ。
なぜ女である事で、不当な扱いをされて、
不当な評価をされないといけないのか。
女性なら誰もが経験しているだろう、
そんな不当な扱いで心を痛めている人からすると、
追い打ちをかけるような、ビジュアルと
メッセージ。誤解を招く要素。
怒る要素は充分である。
西武そごうの広告が伝えたかったこと
では、実際のところ何を伝えたかったのか?
個人的には「女性だけに変化しろ」と言うのは、
お門違いだと思っているし、ここに書く事も、
あくまでも予想にしか過ぎないが、
この広告の内容から読み取れるメッセージは
以下の様になるだろう。
女だからペコペコして酒を注がないといけない。
というような古い価値観のすべてがもし一切なくなって、
「女だから」ではなく、その人そのものの魅力を
素直に認めてくれる社会があったとしたら、
なんかワクワクしません?女性だからって不当な扱い
受け続けるの、正直うんざりしています。
新しい社会、想像するだけでもワクワクするなぁ。
という何ともやんわりした内容である。
一応、最近の表現規制や炎上問題を考慮して、
「どうにか女性に対して応援メッセージを送りたい」
「世の中に良い影響を与えたい」と
思ってやったが故の広告だろうと思う。
どうにかポジティブに行こうと思ったら
批判を浴びてしまった。
しょうがない。
腐ったりんごのビジュアルがデカデカと貼ってあれば、
文章でどんなに「こんな風に腐らないように、
おいしいりんごを栽培しています」と語っても、
「マズそう。買いたくない」となるのが人間というものだろう。
ワクワクしないビジュアルを散々見せられた後に、
ワクワクしませんか?と投げかけられても、
戸惑うだけだと思う。
西武そごうの広告動画
ここで、先ほどの感想を思い返しながら
動画を観てみよう。
広告ビジュアルだけでは伝わらなかった。
ポジティブなメッセージを言わんとしている
雰囲気だけは感じ取れると思う。
西武そごうの広告は何が正解だったのか?
個人的には、この顔にぶちまけられたパイを、
最後にカメラに思い切り投げつけるみたいな演出が欲しかった。
また、セリフも以下の様にしただろう。
そうやって想像するだけで、ワクワクしませんか
そんな世界が来たら、ワクワクしませんか。私はわたし。
(セリフの後にパイをカメラに向かって投げつける)
これなら、女性だけに強いることにはならないでしょう。
と言っても、そもそものビジュアルが女性限定的なのを
どうにかしたいのですが、まだ誤解は少ない様に思えます。
追記:西武の実店舗に貼られていたポスター
追記です。西武の実店舗には、
パイ投げポスターと対になる形で
パイを投げられていない女性のポスターが
貼られていたそうです。そこには
「私の時代を、一人ひとりがつくればいい」
というコピーが。
西武の前を通ったら、物議を醸したパイ投げポスターと対になる形で、このポスターが貼られてた。なるほど、抑圧された時代と「私の時代」が対比されるポスターだったのか。なにごとも全体を見ないと本当のことはわからないものだ。 pic.twitter.com/f53AKwQt2z
— 大貫剛 (@ohnuki_tsuyoshi) January 19, 2019
このコピーからもやはり
あのパイ投げポスターは、
女性の心象風景だったのだな。
という事が分かります。
対になっているものを見ない限りは
分からない
と言えども、
どちらにせよ、片方しか見せない。
見られない様な状況を作り、
訴求しているのだから、
誤解されて当然なのでは……。
という感じはしますが、
新情報だったので追記してみました。
感想はとくに変わらずです。
西武そごうの広告の感想
個人的に
批判はとても多いし、
女性だけに努力を強いるように見えること、
誤解を招く様々な表現を見てみても、
炎上するのは必須だったと思う。けど、
個人的には西武さんの挑戦は
評価してもいいのでは?
と思っている。
昨今の炎上ばかりの世の中に、
西武さんなりに、一生懸命考えて、
どうにか頭を悩ませて女性に対する応援メッセージを作った。
決して、誰かを不幸せにしようとか、
マイナスな気持ちにさせようと思って
作った訳ではないでしょう。
少なくとも動画から、
勇気づけようとしているのは
伝わると思う。
読み解けば、言葉が少なくて
誤解が多いけど、ポジティブなメッセージは
入ってはいると思う。
ただ、批判するだけではなくて、
個人的にはこうしたらいいじゃないか?
もっとこうすればみんな幸せになれるのでは無いか?
何かのプラスになるかどうかは分からないけど、
少なくとも、西武さんはもう大嫌いだから、
商品買わない!みたいな事も違うし、
もっとこの挑戦を認めてもいいと思う。
そうしないと、応援メッセージを勇気出して発表した
そんな少し勇気を出して世の中を変えようとする企業が
どんどん居なくなる。
今回は結果的に、炎上したし、
炎上するぐらいマイナスな表現を世に出すな
という人もいるかもしれない。
それでも、誰かの挑戦とか
失敗とか、一度つまづいたらもう
全部が終わりみたいなのは
ちょっと違うなぁと思うのでした。
追い詰めるよりも、
どうにか互いに歩み寄って
みんながポジティブになれる場所は
どこか、考えていきたいなぁ。
まぁ、そこが難しいんですけどね。
くだらない
女がぐちぐち言ってるだけ
他社の気持ちを理解しようともしない下劣な人間。くだらない、なんて軽い言葉だろ。
吐き気がする。
店頭の「私の時代」のポスターの対比と全体像を見なければ~とありますが、これは西武そごうのホームページにも掲載されており、対比や文章を含めても不快にしか感じませんでした。
ワクワクしませんか?
ーーどこがですか?もううんざりなんですよ!
そのような女性像は飽和状態だし、今さら見たくない。
正月早々こんな醜悪な広告を出してくる企業のセンスを疑います。
パイを投げられる女性に味方してるように見せ掛けて、実はパイを投げる側と何ら変わらないフレネミーのような存在に感じました。
>>匿名さんコメントありがとうございます!
気持ちすごく分かります(´・ω・`)